五色塚古墳〜これがグランディングか!〜

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「見よ。これが王の景色ぞ。」

 

恰幅のよい男性がそう言った。

 

 

 

私はこの日。

予定していた時間より早めに目的地についたので、

五色塚古墳に行くことにした。

 

 

天気も悪く、

ひどく頭が痛い。

すぐにでも寝てしまいたい気分だった。

 

 

「あーーっっこの頭痛どうにかして欲しい」

ふらふら坂を降り、受付を済ませ、

墳丘を見上げる。

「やめようかな」

一瞬、心が折れた。

 

 

 

ダメなら仕方がないと、

とりあえず階段を登る。

息が上がる。運動不足だ。

 

 

 

墳丘のてっぺんまできたが、

もぞもぞ、ぐらぐら気持ちが悪い。

「もういいか!」

私は目を瞑りふらふら歩き始めた。

「ああ、気持ちいいな」

なぜか、目を閉じると楽になる。

「視覚に頼りすぎていたんだな」

 

 

 

ふらふら歩いていたら、

目を閉じているので、

足の裏の感覚がよくわかる。

 

 

ピタリと止めて、

違うなとまたふらふら、、

「ん?」

カチリとこの辺だと感じ止まる。

 

 

感じるままに今度は、

地中に意識をやる。

深く深く、どんどん深く

真っ暗な世界にスルスルとイカリを下ろす感じだ。

イカリが「カチリ」とはまると、

用心深い私は一度、ぐいぐいと引っ張る。

 

 

取れないことを確認したら

次は天空だ。

生憎の天気だが、晴天の日光の破壊力がないだけ優しい。

どんどん空に意識をやる。

これは、なんとなくここで良いだろう。

 

 

私という「筒」の出来上がりだ。

 

 

その筒の中を

ずぉぉぉぉぉ、、、ずぉぉぉぉぉ、、、

と、空気のようなものを通しながら呼吸をする。

 

 

 

感覚に一点集中しているせいか、

いらないことを考える暇もなく

思考がクリアになる。

 

 

一通り不審者でしかない行為を行い

目を開ける。

 

 

 

さっきと同じ風景だ。

名残惜しいが、予定の時刻が迫っていたので、

帰りの階段に差しかかった時だ。

 

 

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「見よ。これが、王の景色だ」

頭の中に声が入ってくる。

私の横に背の高くない恰幅の良い男性が、海を眺めているのを感じる。

生き生きとした印象を与える人。

ただ。それだけで、それ以上はない。

「どうだ!これを見たら悩みなど無くなるだろう」

と、めっちゃ前向きな人だった。

 

 

なんか笑えてきてしまい。

「ほんと、ちっちゃくてすみません」

と、ニヤニヤしながら失礼した。

 

 

 

 

風が吹き、

ここを通る船は見上げただろう。

この古墳は大きな力を現していたのかも知れない。

立地からして、大事な要所であっただろうし、

それもまた誇りであったろう

そう感じた。